クラリネットのロングトーン練習をするときは、あることを意識しないと、意味のない練習時間を過ごすことになってしまいます。
それは、ロングトーンをしているときに「自分の音を注意深く聴くこと」です。
単純な練習だからこそ、奥深いロングトーン。無意識のまま音を伸ばしているだけでは上手くなりません。
このコラムでは、上手くなる人がロングトーンのときに必ず意識していることを詳しく解説していきます。後半では、具体的なロングトーンの練習方法についても楽譜付きでご紹介していきます。
このコラムを最後まで読んで、ロングトーン練習のときに実践すれば、明日からどんどんクラリネットが上手くなりますよ!
ロングトーンとは
ロングトーンとは、音を長く伸ばす基礎練習のことです。
クラリネットなどの管楽器は音作りが大切です。
いい音を作るにあたって必要な、「しっかりとした息づかい」「アンブシュアの安定」「正しい音程をとる」といったことを実現するために、クラリネットのロングトーンは必須の練習です。
ロングトーンは音を伸ばすだけの単純な練習のようで、とても奥深いのです。
上手くなる人はみんな、日々のロングトーンの練習を積み重ねています。
クラリネットでロングトーンの練習をする目的
なぜ、クラリネットでロングトーン練習をしていますか?
「みんながしているから」「ロングトーンをすれば上手くなると言われたから」と、なんとなくロングトーンを練習に取り入れているようでしたら、極論ですがロングトーンをする必要はないと思います。
「誰かから言われた」などといった、「受け身の練習」ではいつまでたってもクラリネットは上達しません。
上手くなる人はみんな、「なぜこの練習をするのか」という目的をもって練習しています。
ロングトーンは単純な練習だからこそ、自分の音に耳を傾けることができます。「どんな音になりたいのか」を思い描き、「なんのためにロングトーンをするのか」という目的をもってロングトーンをしましょう。
ここからはクラリネットでロングトーン練習をすると、どんな良いことがあるか、「ロングトーンをする目的」の部分について詳しく解説していきます。
クラリネットでロングトーンをするメリット
クラリネットの上達のために、ロングトーンをするメリットはたくさんあります。
ロングトーン自体は単純な練習なので、基礎的な奏法を体に覚えさせることにとても効果的です。
ロングトーン練習でクラリネットが上手くなる理由をひとつひとつ詳しく解説していきます。
・ウォーミングアップになる
1日の練習のはじめにはロングトーンから始めることをおすすめします。
多くのプロの人も、クラリネットを吹くときに、まずはロングトーンの練習からはじめています。
ロングトーンはクラリネットを演奏するにあたって、もっとも基礎の部分にあたる練習だからです。
タンギング練習も音階練習も、曲を吹くのにも、ロングトーンで作られた息が基本にあって成り立つものなのです。
・息が長く持つようになる
クラリネットを演奏するならば、できるだけ長い時間息を吐けるようになることが理想ですよね。
息が続かないと、曲の途中の変な場所でブレスを吸わなければならないため、フレーズが途切れてしまいます。
ロングトーンの練習を重ねていくことによって、長く息を伸ばすことに身体が慣れて、どんどん長く音を伸ばせるようになっていきます。
また、ロングトーンをするときに、たくさん息を吸うことを意識できると、吸える息の量もだんだん増えてきます。
息をたくさん吸えるということは、息をたくさん吐けるということに直結してきますので、「息をたくさん吸えるようになる」ことも、ひとつの目標として毎日のロングトーンをしましょう。
・安定した息を作れる
クラリネットできれいな音色を出すには「安定した息」が必須です。クラリネットだけでなく、管楽器の演奏において、息を自由自在にコントロールできる人が楽器をコントロールできる人と言っても良いでしょう。
初心者の人はまず、音のはじめからおわりまで、一定のスピードの息を吐けるように意識しながらロングトーンを行いましょう。クラリネットを吹くときの息は、スピードの速い息です。
ロウソクを吹き消すような勢いのある息を、一定のスピードで楽器に入れられるようになると、音が安定してきます。
・自分の音をよく聴く練習になる
自分の音をよく聴きながら練習をしないと、クラリネットはまったくと言って良いほど上達しません。
例えば、目をつぶったまま絵を描いても自分の作品が良いのか悪いのか判断できないですよね。大袈裟かもしれませんが、自分の音を聴かないということは目をつぶって絵を描くようなものです。
とはいえ、まったく自分の音を聴いていない人はほどんどいないと思います。しかし、自分の音をしっかり聴けていない人はたくさんいると思います。
もっともっと自分が出している音を注意深く聴いてみましょう。
練習をするときは、できるだけ静かな場所で自分の音が聴こえるような環境で練習するのが理想です。しかし、部活などで練習をするときは大人数の中で個人練習をせざるをえないときもありますよね。
そんなときにも、クラリネットのロングトーン練習をするときに、最低限これだけは意識してほしいポイントを次の章で解説していきます
クラリネットでロングトーンをする時に気をつけること
これからご紹介していくことは、ロングトーンのときだけでなく、クラリネットを演奏する上でいつも大切なことです。
ロングトーンは単純な練習だからこそ、細かいところにまで意識を持っていきやすいので、基礎的なことを習得するにはぴったりの練習方法です。
クラリネットを吹くために大切な基礎テクニックはロングトーンで習得しましょう!
息が安定しているかどうか
クラリネットが上手な人は、息のコントロール力が優れています。
ロングトーンのときに、音の初めから終わりまで、まっすぐ安定した息を吹き込むことを意識しましょう。
初心者の人に多いのが、吹きはじめに息がしっかり入っていないことです。クラリネットを吹くときは、音の出始めからスピードの速い息をいれるようにしましょう。そして、そのスピードの速い息を最後まで持続しましょう。お腹の支えを意識すると息がしっかり支えやすくなります。
アンブシュアが動いていないか
アンブシュアとはクラリネットを吹くときの口の形のことです。クラリネットを吹くときに安定したアンブシュアはすごく大切です。
ロングトーンをするときこそ、アンブシュアが安定しているか確認しながら練習しましょう。
ロングトーンのときにアンブシュアが動いてしまう人は、必ずと言って良いほど、タンギング練習をしているときも曲を吹いているときもアンブシュアが動いてしまっています。
単純なロングトーンの練習のときに、安定したアンブシュアづくりをしておかないと、複雑なテクニックが必要になったときに、たくさん意識なければいけないことがある中で、アンブシュアを修正することに意識を持っていくことはとても大変です。
アンブシュアに自信がない人はロングトーンのときは鏡を見ながら練習することをおすすめします。
アンブシュアがある程度できている人でも、音の出だしのときにアンブシュアが動いてしまっている人がたくさんいるように思います。
クラリネットで音を出すのに必要なのは息のスピードです。口周りの筋肉は安定させるために使ったとしても、音を出すときに噛みすぎてしまったり、アゴが動いてしまったりしまわないようにしましょう。
音の出だしはきれいかどうか
音の出だしがはっきりしなかったり、反対に音の出だしだけ強くなったりしてはいけません。基本的にロングトーンのときの出だしはまっすぐの音で出られるようにしましょう。
音を出し始めるときに、アンブシュアが安定していなかったり、息がしっかり入っていなかったりするとまっすぐに出ることができません。アンブシュアを確認して、はじめからスピードの速い息をいれると出だしが上手くいきますよ!
音のはじめは軽く「トゥ」と言ってリードに舌をついてください。「トゥー」と言うのと同時にしっかりとした息を吐けるようになるときれいな音の出だしが作れます。
音の終わりの処理は不自然ではないか
ロングトーンのときの音の終わりの処理も大切です。ロングトーンの音の終わりは最後まで音量はキープしつつも、「ぶちっ」といきなり切れないようにしましょう。だからと言って音の終わりに向けてだんだん弱くなってしまうのもよくありません。音が切れるときに少し余韻が残るで程度が理想です。
ロングトーンをしないとどうなるか
私は過去にクラリネットを練習しなかった時期がいちどだけありました。吹いたとしても曲を少し吹くだけで、一定の時期、ロングトーンをまったくしていませんでした。
ロングトーンをしないことで、以下の変化がありました。
・息が持たなくなる
・息が不安定になる
・アンブシュアが保てなくなる
以上の状態になった結果として、不安定な音になったり、響きを上手く作れなくなったりします。
ロングトーンは効率の良い練習
時間がないときでも、短時間で良いのでロングトーンをすることをおすすめします。ロングトーンをしないと、吹きかたや音の響かせかたがおかしくなっていても気づけないおそれがあります。
例えば、1日に15分しかクラリネットの練習ができないときでも、そのうちの5分はロングトーンの練習に使うことをおすすめします。
そのたった5分が、あなたのクラリネットの技術を維持する大切な時間になります。維持どころか上達につながる時間にもなるかもしれません。
なぜなら、クラリネットでロングトーンをしている時間は自分の音を集中して聴くことができるからです。
自分の音を聴きながら演奏する時間を積み重ねていけば、少しずつでも確実に上手くなっていきます!
実践!クラリネットのロングトーンの練習方法
ここからは、実践編です。
初心者から上級者まで、どなたでも役に立つ基本のロングトーンの練習方法や、ロングトーンの応用練習までお伝えしていきます。
基本のロングトーン(楽譜解説付き)
・メトロノームを4分音符=60で鳴らしましょう。
・たくさん息を吸ってください。
・8拍のばします。
息をたくさん使って、クラリネットをしっかり響かせて鳴らしましょう!初めから終わりまで同じ強さでのばしてください。音の強さは、楽に鳴らせる「メゾフォルテ」くらいではなく、「フォルテ」くらいのつもりでしっかり大きめに鳴らしましょう。
・4拍お休み。次に吹く音のイメージを作りましょう。お休みの最後の1拍間をかけてたくさん息を吸います。(1拍で吸わなければいけない決まりはないので、2拍かけてゆっくり吸っても良いです。)
以上の繰り返しです。
ロングトーンは毎回すべての音でおこなうようにしましょう!
♭Bの音階ばかりでロングトーンをしている人がいたら、今日からはすべての音でロングトーンをすることをおすすめします。
曲にはさまざまな調がありますし、クラリネットは音によって鳴りやすい音と鳴りにくい音があるので、すべての音をきれいに出すには、すベての音のロングトーンが必須です!
下は最低音の「ミ」から、上は、ある程度初心者でなくなってきたら、高い「ソ」の音くらいまではロングトーンするようにしてください。
よく、「高音がきれいに出ません」というお悩み相談をいただくのですが、その答えは簡単です。「高い音を吹き慣れていないからです。」
金管楽器のハイトーンと違って、クラリネットの高音はコツを掴めば、誰でも出ます。普段から高い音を苦手だと思わず、鳴らしておくようにしましょう。
メトロノームの60という数字はあくまでも目安であるので、余裕を持って8拍のばす事ができるようになったら、テンポをゆっくりにしたり、拍数を8拍より長くしてみたりしてください。
応用編のロングトーン
クラリネットで基本のロングトーンができるようになったら、ぜひ応用編にもチャレンジしてみましょう!
基本のロングトーンでは、強さは「フォルテ」くらいでしたが、さまざまな強弱でロングトーンをしてみましょう。強い音のときと、弱い音のときでは、体の使いかたが異なります。
ダイナミクスレンジ(強い音や弱い音の振れ幅)を広げるためにも、どんな強さの音でも良い音色で音を出せるようになるためにも、ロングトーンはさまざまな強弱で練習しましょう!
【応用ロングトーン 例1】「ピアノ」でロングトーン。
弱い音のときでも、息をたくさん使い、豊かな音色をイメージしてクラリネットを響かせてロングトーン しましょう。
発音にもよく気をつかってください。飛び出てもいけませんし、どこからが出だしなのか分からないようなはじまりでもいけません。「ここから出るぞ!」と狙ったタイミングでまっすぐ出られるように意識してください。
【応用ロングトーン 例2】クレッシェンドとデクレッシェンドのロングトーン】
「ピアニッシモ」から「フォルティッシモ」までクレッシェンドとでクレッシェンドをするロングトーンをしてみましょう!
この楽譜のように、はじめは「ピアニッシモ」で出て、4拍かけて「フォルティッシモ」までクレッシェンドし、また4拍かけて出だしの「ピアニッシモ」までデクレッシェンドしてください。
クレッシェンドをするときもデクレッシェンドするときも、お腹でしっかりと支えて、力任せになったり、支えがない音になったりしないようにしましょう。
1番強いところと1番弱いところの差がしっかりつくようにしましょう。慣れてきた人は音程のキープも意識して練習してみてください。
クレッシェンドとデクレッシェンドのロングトーンは難しいですが、クラリネットの上達にとても効果的な練習です。
このように息を動かす練習は柔軟な音色づくりに大いに役立つからです。また、クラリネットの奏法が間違っていたり、変なリードですと、上手く強弱をつけられませんので、自分の状態を確認する手がかりとなる練習でもあります。
まとめ
クラリネットでロングトーンをするときは、自分の音をよく聴きましょう。
「どんな音を目指すのか」という目的をもって練習することが大切です。
ロングトーンの練習では意識するべきことがたくさんあります。例えば以下のことです。
・息のコントロール
・発音(音の出だし)
・音の処理(音の終わりかた)
・アンブシュアの確認
正しい奏法を理解して、毎日きちんと自分の音を聴きながらロングトーンをしていたら少しずつでも確実にクラリネットが上手くなっていきます。
明日からのロングトーン練習に、ぜひこのコラムで学んだことを生かしてみてください!
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