私はクラリネット奏者として生活している最中、歯科矯正をはじめました。「歯科矯正をしながら楽器の演奏はできるのか?」という不安でいっぱいでしたが、クラリネットの場合はプロとしても生活できました。
しかし、管楽器奏者の歯科矯正において注意しなければいけないことはいくつかあります。
歯科矯正をしていて苦労したこと、管楽器を演奏しながら歯科矯正をするときの注意点など、すべて私の経験から赤裸々にお伝えします。
歯科矯正中に楽器は吹けるの?
歯科矯正をはじめてから、生徒さんやその親子さん、同業の楽器の方に、
「歯科矯正中も楽器は吹けるのですか?」
という質問をたくさんいただくようになりました。そのときわたしは、
「クラリネットでしたら問題なく吹けます」
とお答えしています。歯科矯正の装置がついた状態に慣れてしまえば、クラリネットの演奏は可能です。
しかし、歯科矯正をはじめる前に知っておきたい注意点がいくつかありますので、ご紹介していきたいと思います。
歯科矯正ははじめが大変
私は上下の歯に器具を装着する矯正をおこなっています。矯正器具を装着してからの10日間は、正直「矯正をしなければよかった」と思いました。なぜなら、矯正器具があたることによって、口の中が口内炎だらけになってしまい、楽器を吹くどころか、食事もままならないほどでした。
しかし、10日くらい経ったころから、口内炎は消え、楽器も吹けるようになってきました。
人間の身体の適応能力ってすごいですね。はじめは違和感でしかなかった矯正装置が、自分の身体の一部のように感じるようになってきました。
個人差はあると思いますが、私の経験から、管楽器奏者が歯科矯正をするにあたって、最低でもはじめの1週間は楽器を吹くことはお休みした方が良いと思いました。
私は装置装着の翌日にレッスンのお仕事をいれていましたが、その日はまだ口内炎がひどくなかったのでなんとか大丈夫でした。しかし3日目以降は、レッスンでさえ出来なかったと思います。4〜5日目は、口内炎がひどすぎて、言葉を発することもできないくらいでした。
矯正始めて4〜6日目が口中に口内炎が出来て食べれず吹けずで苦しすぎる日々。これが3年も続くのかと思うとつらくて枕を抱えて少し泣きました笑。7〜9日目で身体が慣れたのか劇的に回復していき食事が出来るようになったあたりから楽器も吹けるように。#管楽器奏者ですが歯科矯正はじめました
— Ryoko Kuzushima (@klcry9) 2018年9月29日
歯科矯正中に楽器を吹くにあたって
装置装着直後のようなつらい経験ははじめだけで、その後はそのような痛い思いをすることはありませんでした。しかし、管楽器奏者の歯科矯正にあたって、知っておきたい3つの注意点があります。
1. メンテナンス後は痛むので注意!
2. バテやすくなる?
3. 装置があたって痛い箇所があるかも?
1. メンテナンス後は痛むので注意!
矯正メンテナンス後は、ワイヤーを締めつけるので歯が動くため、痛みがあります。
痛みの感じ方は人それぞれですが私は「堅いものを食べるのが痛い程度の痛み」だと感じています。月によって痛み方は変わりますが、痛みが強い時は、触れなくても虫歯のように痛むこともあります。
クラリネットは上の前歯をマウスピースにつけるので、メンテナンス後、2〜3日は吹くときに前歯が痛いです。
なので、矯正メンテナンス直後は、シビアな本番をいれないようにしています。
1〜2日間くらいは、練習をお休みしても良いくらいの余白をもたせるようにスケジュールを組んでいます。
矯正メンテナンスはクリーニングも痛いしその後も痛い。しかし馬鹿なので先月のことは全部忘れて、うどんの油揚げが噛めなくて痛い っての何回やるの。あとその日にレッスン入れちゃダメってのも覚えて欲しい私。#管楽器奏者ですが歯科矯正はじめました
— Ryoko Kuzushima (@klcry9) 2018年12月26日
2. バテやすくなる?
歯科矯正の装置をつけたまま演奏することに慣れてしまうと、それが普通のように感じるくらい問題なく演奏できます。
しかし、装置が入っている分、口が緩みやすくなります。それを補うために口の周りの筋肉を余分に使うので、長時間演奏していると、以前よりバテやすくなった気がします。
ですが、歯科矯正中にソロリサイタルをおこなうこともできたので、演奏活動にはさほど大きな問題はないと思っています。
3. 装置があたって痛い箇所があるかも?
わたしは矯正をはじめる前、歯科矯正中にクラリネットを演奏する上で「下の歯の装置が、クラリネットを演奏する際に巻きつける下唇にあたってしまい、下唇の内側が痛むのでは?」と心配していました。
しかし、そこは然程問題ありませんでした。
とはいえ、口の中に器具の跡がついてしまうので、わたしはこのようなあぶらとり紙をたたんだものを、下の歯と下唇の間に挟んでいます。
歯科矯正をはじめたときに、クラリネット演奏中に装置が口の中に当たって痛かったのは、下唇の内側ではなく
ここでした。
クラリネットを吹くときに、上の歯の横側の装置が上唇の内側に当たるのが痛かったです。
歯科矯正をはじめて1〜2ヶ月は、楽器を吹くときにこの位置のブラケット(装置)に歯医者さんでもらったシリコンカバーみたいなものをつけていました。
矯正12日目。ほぼなんでも食べられるようになった。そしてこのシリコンカバーみたいなものをつければ楽器も普通に吹けるし、アンブシュアも取り戻してきた。ただこの数日の空白感がすごい。これからガシガシ取り戻す。#管楽器奏者ですが歯科矯正はじめました pic.twitter.com/bGhBxgtyvP
— Ryoko Kuzushima (@klcry9) 2018年10月3日
しかし、2ヶ月経過後は慣れてきたせいか歯が引っ込んできたせいかわかりませんが、必要ないくらい気にならなくなりました。
個人差がありますが、楽器を演奏するアンブシュアをつくるときに、装置が当たって痛い箇所があるかもしれません。
管楽器奏者なのに歯科矯正をはじめた理由
クラリネット奏者の歯科矯正は可能です。
しかし、上記のように困難はつきものです。正直なところ、演奏に支障が全くないと言ったら嘘になります。
大変な思いをしてまで、歯科矯正を始めた理由はさまざまあります。
・歯並びにずっとコンプレックスがあったから
・先天性欠損があり、奥歯に大きな隙間が二箇所あり、早く対処する必要があったから
・私はこの先もクラリネット奏者でい続けると思ったから
・シビアな本番が近々なかったから
といったところです。毎週のようにコンサート続きだった日々を少しお休みしていたため、「やるなら今だ!」と思い、歯科矯正をする決断をしました。
私は小学生のとき、自分の努力不足のせいでマウスピース矯正に失敗しています。
その後も、歯並びに関するコンプレックスが主な理由で、ずっと歯科矯正をしたかったのですが、口の中の状態が変わることは楽器奏者生命にかかわることだとおそれて、なかなかはじめられずにいました。
また、先天性欠損(永久歯が生えてこないとのろがある病気。10人に1人はいる)のことも、ずっと不安でした。自分の歯に対する後ろめたさから、何年も歯医者さんに行っていない生活でした。
しかし、自分の身体のことを考え直すきっかけがあり、不安なことはいち早くつぶしておこう!と思い、歯科矯正行うことを決意しました。29歳のことでした。
近年、歯科矯正をする人がどんどん増えてきているように思います。
私のクラリネットの師匠も、私を大学で教えてくださっているときに歯科矯正をしていて、「あ、管楽器奏者も歯科矯正ができるんだ」と柔軟な考えを持つことができるきっかけのひとつとなりました。
「何かのせいで、何かが犠牲になることをできるだけやめたいな」という考えから、わたしは管楽器奏者ですが歯科矯正をはじめました。
もちろん、金管楽器など楽器によっては難しい場合もあると思います。経験者が少ない管楽器奏者の歯科矯正です。歯科矯正を検討している方が、私の経験からなにかヒントを得てくださったら良いなと思いこの記事を書きました。
まとめ
・歯科矯正中もクラリネットは吹ける!
・歯科矯正のはじめの1週間は口内炎だらけになって大変
・歯科矯正のメンテナンス後は数日痛むので、楽器を吹くのが困難。しかし、不可能ではない。
・やりたいことはやれば良い!変化したいなら何事にも困難はつきもの。