手術翌日
手術翌日、車椅子でCT。
この検査がOKなら歩行が許可される。トイレに自分でいける喜びよ!
早く終われと思いながら完全介助してもらいながら、検査へ。
傷口が若干痛むけど、フレーム跡の痛みはもうほとんどない。頭痛ではなく、傷跡の痛みという感じ。
先生の許可が出るまで、ベットで待機。起きあがれるようになってはじめにしたことは楽器を触ること。
ベットの横に置いてもらっていたクラリネットをなんとか引き寄せ、ベットの上で組み立てる。怖かった。これで治っていなかったら全部意味のないことになってしまう。
まずは両手でキーの感触を確かめる。そして、いつも指が動かない左手の小指の動きを試してみる。信じられないことに自分の手の感覚まま、ジストニアの症状だけごっそり切り抜かれていた。手術は成功したようだ。安心と喜びと長い緊張状態が解けて、気付いたら声が出るくらい泣いていた。
先生から聞かされていた後遺症はこの時点では何もなし。
先生に伺ったら、術後2〜3日目をピークに脱力症状や言葉が出ない、などの症状が出て緩やかに回復していくことが多い、とのことだった。後遺症はこれから出る可能性があるのか。
そして長い絶食明けの食事。この時食べたツナと豆のサラダをサンドイッチにしたものは、私の人生のナンバーワンサンドイッチに認定された。
回復〜退院
検査の結果問題なく翌日には退院許可が出た。歩いてみても何も問題ない。力も入るので荷物を持てる。それに早く楽器を練習したいと思った。これ以上入院していたら体力の低下が加速しそうだ。
楽器を持って直ぐにひとりの先生がきてくださり、症状が改善されたことを報告。その後、平先生はいらっしゃらなかったけれど、先生方が4名ぞろぞろいらっしゃった。手が良くなった事が伝わっているようで、手術をしてくださったスーパー冷静クールな先生がニコニコしている。「やったじゃん」と言ってくださった。
多分若い先生たちは私と同じくらいの歳か、下手したらもう少し若いのかもしれない。こんなすごい手術をする先生たちも、普通に話していると友達にいそうな感じの普通の人間だなと感じる。
先生方がみんなさん話しやすかったので、この入院は苦ではなかったし、たくさんの方のお心遣いによって手術は悪い思い出にならずに済んだ。もちろんもう一生こんな経験はしたくないけれど。
手術をしたのが木曜日、土曜日の朝には退院した。なんだか感慨深い気持ちと、いち早くここを抜け出したい気持ちが入り混じっていた。
定位脳手術の後遺症について
今この記事を書いているのは術後9日目。結局、一度も後遺症は出なかった。単にラッキーだっただけだと思う。私の人生においてこの類のラッキーは珍しい。しばらく素直に喜べなかった。
術後1週間後頭を止めているホチキスをとってもらうために、再び女子医大に行ったけれど、後遺症が出ていないならそういうこともあるし、もう喜んで良いとのこと。
ホチキスがついている間はなんだか頭がつる感じかしていたけれど、傷の痛みがあって薬を飲んだのは退院してきた夜が最後。
抜糸後は、カサブタになっていて、触ったら血が出たので、そっとしておいたけれど、それ以外は問題なし。ジストニアの症状だけがきれいに取れた。
最高な1日をキメた!!
動きすぎると頭痛くなる。頭掻くとカサブタが取れて血が出てびっくりする。明日はゆっくりしよう。もう少しだけ、アルコールと激しい運動とストレスを控える。 pic.twitter.com/C6RPHQJ6GO
— Ryoko Kuzushima(葛島涼子) (@klcry9) October 1, 2020
もちろん、三年近くこの指をかばって演奏していた少し編なくせは直ぐには抜けないし、入院で落ちまくった(楽器演奏の)体力回復には時間がかかっているけれど、概ね元気。そして、毎朝希望に満ち溢れて起きる。治ったんだ。数日間はなかなか信じられなかったけれど、最近やっと現実味が湧いてきた。
入院生活はたくさんの病院の方々のおかげで、今思い返しても良い時間だった。
医療の力で治していただいたので、ここからは私の力で演奏を音楽をしていく番だ。活躍できるよう正しい方法で地道に頑張ろうと思う。
久しぶりに自宅のベットで朝起きて、しあわせだと思った。道路を歩いていて、心から、いま死にたくないと思った。
この先の人生、たくさんことに挑戦できる身体にしてもらえた。
気がついたら、ひとりだけでは手に入れられなかったものをたくさん受け取っていた。私も誰かの未来を作る仕事ができたら
— Ryoko Kuzushima (@klcry9) September 27, 2020