クラリネット奏者が歯科矯正について語る【吹奏楽は続けられる?】

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クラリネット奏者のクズシマです。

私は1年半前から歯科矯正(表側ワイヤー矯正)をしています。

歯科矯正をはじめる前は、矯正しながらクラリネットが吹けるのか不安すぎて「歯科矯正 クラリネット」でググりまくっていました。笑

私はクラリネットの演奏の仕事をしているさなか、29歳で歯科矯正をはじめました。クラリネットが吹けなくなったら仕事ができなくなってしまうので、歯科矯正をはじめるときは、本当に不安でした。

「歯科矯正をしてクラリネットを吹くことに問題がなかったか」とたずねられると、そうではありませんが、しかし、今もクラリネットを吹いて仕事をすることができています

特に中高生くらいの年代の方で矯正をはじめる方は「吹奏楽部だけれど、管楽器は続けられるのか?」といった不安があるかもしれません。

こういった方の疑問や不安を解消できるヒントになれば良いなと思い、この記事を書きました。

誰にアドバイスを求めれば良いか

歯医者さんに「歯科矯正中もクラリネットは吹けますか?」と聞いても、「吹ける範囲で無理せず‥‥」といったお返事しか返ってこないでしょう、なぜなら彼らは歯科矯正をしながらクラリネットを吹いたことがないからです。

歯科矯正中の楽器演奏の相談は、その楽器の歯科矯正の経験者にするのが、1番的確なアドバイスをもらえると思います。

クラリネットの先生が歯科矯正経験者だった

私が歯科矯正に踏み切ることができたのは、私のクラリネットの先生が矯正経験者で、矯正の話を聞くことができたことです

また、先生が矯正をしているところを間近で見ていたので、(そのときは自分は歯科矯正を考えてもいませんでしたが)「こんな素晴らしい奏者の方が、一流の仕事をしながら歯科矯正をすることができるんだ!」ということを感じることができました。

とはいえ、ひとそれぞれ歯並びの状態によって、歯科矯正をして楽器を吹くときに不具合が出る場所は変わってきます。一概に「この人が大丈夫だったから、私も大丈夫」とは言い切れません。

なぜクラリネット奏者が歯科矯正をはじめたのか

なぜ、演奏に支障が出るリスクを背負ってまで、クラリネット奏者が歯科矯正をしたかったかというと、理由はいくつかあります。

歯並びを良くしたかった

まずは単純に、これが1番です。
私はクラリネット奏者ですが、普通のひとりの人間です。歯並びが悪いことがずっとコンプレックスでした。前歯がガチャガチャなことを気にして、写真のときも口を空けて笑えずにいました。

「でも、私はクラリネット奏者で歯科矯正できないから仕方ない」と自分の感情にフタをし続けて、矯正を決意する日までは過ごしていました。

ちなみに、私はクラリネットを吹くことに関して自分の歯並びの悪さは障害になっているとは思ったことがありません。確かに上の歯がきれいに揃っていたら、もっと良いのかもしれませんが、気にするほどの不自由は感じていませんでした。

歯が先天的に足りなかった

あとは、私は先天性欠損といって、「乳歯が抜けたところから永久歯が生えてこない」という状態で、下の奥歯が2本なくて、歯に大きなすきまが空いていました。

本来でしたら、ブリッジをしたり、インプラントをしたりして治療しなければいけないのですが、歯科矯正で歯を寄せることによって問題解決できることを知りました。(現在解決済)

プレッシャーのある本番がしばらくないタイミングだった

私は歯科矯正をはじめる少し前のタイミングまでは、ずっと戦いの日々で(演奏の面で)一瞬たりともクラリネットを休めるタイミングがありませんでした。

中学生でクラリネットを始めてからは、部活・吹奏楽コンクール・音大受験・試験、オーケストラのオーディション、コンクール、シビアな仕事、リサイタル、、という感じで「たった1日でも、練習できない日があったら困る!!!」といった状態でした。

しかし、矯正をはじめる約半年前にフォーカルジストニアという病気にかかってしまったため、(治療のために)しばらく大きな本番への出演を控えていたのです。
楽器が吹けなくなってしまったら仕事の面で困りますが、最悪、少し楽器の調子を崩しても問題ないタイミングは今しかない!!ということで歯科矯正に踏み切りました。

これからの人生まだ長いと気づいた

歯科矯正をはじめる少し前の私は「今この瞬間」と「次に待っている大切な楽器の本番」のことしか考えられない人でした。

しかし、さまざまなきっかけから「人生はまだ長い」「何かはじめるなら今が1番若い」と思うようになったのです。

自分の健康や楽器以外の願望と、まだまだ続く長い楽器人生をトータルで見たときに、「やりたいことは今のうちにやっておいたほうが良い」と気付き、歯科矯正に踏み切りました。29歳のことでした。

クラリネット奏者の、おとなの歯科矯正が始まりました。

クラリネット奏者の歯科矯正中の苦労

結論を言ってしまうと、ワイヤー矯正の装置が入った状態でもクラリネットは吹けます
しかし、歯に装置がついているのです。そんな状態で、残念ながら一筋縄でいく訳がありません。ここからは私が歯科矯正中にクラリネット演奏で苦労したことをお伝えしていきます。

歯科矯正をはじめて2週間くらいは地獄

歯科矯正あるあるだと思うのですが、歯科矯正は器具を装着してしばらくが1番つらいです。慣れない異物(装置)に口の中がびっくりして口内炎だらけになり、食事も会話もままならない状態でした。

クラリネットを吹くなんてもってのほかでした。

私は装置をつけた翌日にレッスンの仕事を入れていて、そこではまだ口内炎が酷くなかったのでなんとか吹くことができましたが、それからどんどん口内炎がひどくなり、その翌日以降5日間くらいはクラリネットが吹けなかったです。

矯正装置をはめて、7日後から演奏の仕事をしていましたが、装置があたって痛すぎるのと、感覚が変わったことで本当につらかったです。

このときばかりは「矯正なんてやらなければよかった」と本気で後悔しました。

しかし、それはたった2週間くらいのことで、そこからは徐々に慣れていき、普段の痛みはなくなり1ヶ月くらいで問題なく演奏できるようになりました。

ちなみに私は、装置があたって痛かったのは、下の歯と唇を巻くところではなく、上の歯の両サイドでした。

詳しくはこちらの記事で書いています。下唇が装置にあたって痛いときの対処法もご紹介しています。

メンテナンス後、クラリネットを吹くときに前歯が痛い

ワイヤーの歯科矯正では1ヶ月にいちど、ワイヤーを締め直すメンテナンスをおこなうため、歯医者さんに通います。そのたびに歯が動いていくので、痛いです。
その後の数日間、硬いものが食べられなくなるのは歯科矯正において有名な話だと思うのですが、クラリネットは上の歯をマウスピースにつけて演奏をするので、痛いです

痛いのは我慢できたとしても、痛いと噛めなくなって「ゆるい口」になってしまい、うまく吹けません。

私は気にせず吹いているのですが、痛みを我慢しすぎると‥頭痛がしたり熱が出たりします。メンテナンス後は無理して吹かないほうが良いです。

そのため、歯科矯正のメンテナンスは、「数日間シビアな本番がない時期」にいれるようにしています。通常の練習くらいなら問題なくおこなえますが、長時間の練習はつらいかもしれません。

コンサートなどの本番前はメンテナンスをいれるのは避けたほうが良いです!
吹奏楽部の学生の方でしたら、試験週間前などにメンテナンスをいれるのが良いのではないでしょうか。

歯科矯正中はクラリネットのアンブシュアが崩れやすい

これが、私が1番困っていることです。クラリネットは下唇を下の歯に巻きつけてアンブシュア(楽器を吹くときの口の形)を作るので、装置がついている状態では、あごが膨みやすくなります。

自分自身もそうですし、歯科矯正中のクラリネットの生徒さんを見ていても、アンブシュアが膨らんでしまっていることが多いです。

しかし、アンブシュアはクラリネットを安定して吹く上で大切なので、なんとか作っています。気にしすぎず、気にしながらなんとか演奏しています。ただ、やはり矯正していないときよりは、口がバテやすいです。

あまり人と比べても仕方ありませんが、このあたりのことは「矯正をしていない人と比べるとハンディを背負っているな」と感じずにいられません。

しかし訓練すれば慣れるので、アンブシュアを作ることは不可能ではありません。

アンブシュアができていないと、音がぼやっとしてしまいますし、タンギングがうまくいかない、音程も悪くなるといった不具合がたくさんおきます。

矯正中の生徒さんにも、(膨らんでしまう気持ちはわかるけれど)「アンブシュアはきちんと作りましょう」と言ってしまって良いと私は思います。日々、意識して作ればできるようになります!

矯正してるのに吹けるの?と聞かれすぎて疲れる

これはあまり気にしていないのですが、いろいろな方に「矯正しているのにちゃんと吹けるの?」と聞かれすぎることが多すぎて、疲れます。

「吹けているからここにいますけど何か?」と言いたい気持ちを抑え、
「なんとかできてます〜」とゆるっと答えています。笑

矯正中は装置がついていて見た目が恥ずかしいという気持ちがはじめはありました。
しかし、今は「矯正は良くなるためにしているんだし、誰に何を言われても気にしない」「そして自分も、矯正しているからあれができないこれができない、と何かを諦める言い訳にしない」と思って日々過ごしています。

歯科矯正をはじめてよかったこと

ここまで、歯科矯正中にクラリネットを吹くことの大変な部分ばかりお伝えしてきてしまったのですが、矯正をして良かったこともたくさんありました。

きれいになった

治療には約3年かかりますが、半年くらい経った時点でだいぶ前歯が並び、見た目が良くなりました。すべて終わる日が楽しみです。

歯に対する不安がなくなった

矯正をはじめる前までは、歯の悩みから目を背けていて、心の奥底にずっと「歯の健康に対する不安」がありました。
歯医者さんに月にいちど通うようになってからは、「虫歯があるのではないか」「将来、私の歯は大丈夫なのだろうか」といった不安はもうありません。

先天性欠損も、ブリッジやインプラントをすることなく直すことができたので、費用も歯科矯正だけの分で済んでラッキーでした。

痛みも前向きな痛みなのでつらくない

クラリネットを吹きながら歯科矯正をすることはつらいことも少なくありません。しかし、こういった苦しみや痛みはすべて「より良い未来のため」のものだと思ば全然つらくないです。
歯科矯正は自分できちんと決断して決めたことなので、「やらなきゃ良かった」と(はじめの数日は思いましたが、、)思うことも今ではありません。

クラリネット吹きで歯科矯正をはじめるべきか迷っている方へ

歯科矯正をしながらクラリネットを吹くことは、苦労があります。
しかし、吹けないことはありませんし、矯正をしていることで、上達できないということはありません。

国際コンクールにチャレンジするくらいのレベル出なければ、「クラリネット吹きは歯科矯正をしても良い、できる」と私は思っています。

ひとつだけ、注意するとすれば、歯科矯正をはじめる(装置をつける)タイミングは本当に気をつけてください!
最低、約1週間〜2週間はクラリネットを吹かなくても良い時間を確保する必要があります。

歯科矯正によってクラリネットをやめる必要は全くありませんし、何かを諦める必要ももちろんありません。

吹奏楽部での3年間は貴重ですが、人生の3年間も貴重です。自分自身でよく考えて、歯科矯正をはじめるか決断し、クラリネットと歯科矯正とうまく付き合っていきましょう。

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