クラシック音楽家として収入を得られるのはほんのひと握りだと言われていました。
確かに、1000人規模のコンサートをおこなうソリストや、オーケストラに所属することができるのはほんのひと握りです。

このコラムでは音楽家として安定して就職するにはどうしたら良いか。
また、フリーランス音楽家の収入源についてお伝えし、フリーランス音楽家としてこれまでに私がしてきた仕事も赤裸々にご紹介します‥!

2020年の働き方はフリーランスの時代が来ていると言われている今、音楽家として収入を得る方法も多様になってきていると考えられます。
これからの時代の波にうまく乗って、音楽家として幸福に生きていく方法について書きました。



音楽家として就職する方法

音楽家(演奏家)として会社に所属して、一定の収入を得ることができたら夢のようですよね。
時間や活動の自由は制限されますが、安定した収入を得ることができるのは就職でしょう。管楽器奏者が演奏をすることを仕事として就職できる業種は以下のものがあります。

・オーケストラ
・ブラスバンド
・自衛隊の音楽隊
・警察の音楽隊
・消防音楽隊

日本国内のオーケストラの数は約36、ブラスバンドは約3で、それぞれの団体によって雇用形態が異なります。
これらは基本的に副業可能ですので、それぞれの音楽活動をおこなっています。プロのオーケストラ奏者、ブラスバンド奏者になるには厳しいオーディションに合格する必要があります。

自衛隊、警察、消防の音楽隊はブラスバンドの演奏家として仕事をすることになります。
自衛隊では数年前に初めて声楽の採用がありました。
警察音楽隊は、音楽家としての仕事と、そうでない警察の一般業務との比率が各都道府県によって大きく異なります。
消防音楽隊は契約雇用がほとんどで、就職とは言えないかもしれません。

 

フリーランス音楽家の収入源

上記のような仕事以外に、音楽家の収入はどんなものがあるのか、主なものをご紹介します。

・コンサート
コンサートは誰が企画をおこなっているのかによって収入の入り方が変わってきます。自主企画ですと経費以外が収入になります。演奏以外にも企画やチラシやチケットの作成、宣伝活動も重要になってきます。

・依頼演奏
イベントやパーティーなど主催者に依頼されて演奏を行います。コンサートの主旨などは決まっていることが多いので、曲を決めて演奏をおこなうのみです。

・オーケストラのエキストラ出演
オーケストラの団員さんに依頼されて助っ人としてオーケストラのコンサートに出演します。依頼は1回1回のコンサートごとにいただきます。

・レッスン
生徒さんと直接やりとりをする場合は、いただいた額が全て収入になります。自分で教室を運営している人も同じです。個人レッスンだけでなく、吹奏楽部やオーケストラ部の外部講師というレッスン方法もあります。

・教室の講師
楽器店や音楽教室の講師は、生徒の数(レッスンの数)によって一定のお給料を受け取ります。生徒が支払う額から、経費などを引かれた何%かが収入になるということです。

・レコーディング
テレビなどで使用される録音の仕事です。首都圏以外は仕事の数が非常に少ないです。



フリーランス6年目の私がこれまでにした仕事

私は大学院終了以降ずっとフリーランスのクラリネット奏者として仕事をしてきました。
クラシック音楽がメインですが、音大生時代からバンドをしていたご縁もあり、その他のジャンルにも精通してきました。

収入の大小は問わず、一応音楽家として収入を得たお仕事をできるだけ細かく箇条書きにてご紹介します。
働き始めた頃は音楽で仕事をするなんて大変‥‥と思っていましたが、数年間でこれほどさまざまなお仕事に巡り合うことができました。

・オーケストラのエキストラ
・寄せ集めの吹奏楽での演奏
・寄せ集めオーケストラでの演奏
・ソロのリサイタル(自主企画)
・アンサンブルのコンサート(自主企画)
・アンサンブルでコンサートへ出演(チケットノルマ制(一定以上から収入になる)
・バンドのライブ
・野外音楽フェス出演
・バンドで学校公演
・バンドでCDリリース
・企業のパーティーでの演奏
・レストランでの演奏
・ホールからの依頼演奏など、他依頼演奏多数
・楽器選定
・メーカーでの楽器の販促、アドバイザー
・音楽アプリ開発の企画
・チンドン屋での演奏
・チンドン屋で海外ツアー
・ビアガーデンでチップ制の演奏
・ストリートライブ
・演歌歌手の方の舞台での芝居と演奏
・ロックバンドのライブでのパフォーマンス
・個人レッスン
・グループレッスン、ワークショップ
・講習会講師
・吹奏楽部でのクラリネットパートの指導
・吹奏楽部、オーケストラ部で合奏指導
・オーケストラ部のクラリネットパート、木管セクションの指導
・オンラインでのレッスン

以上、思いつく限りあげてみました。このように見るといろいろな仕事をしていますね‥‥。

半分以上は同業の方(演奏家の方)からの依頼で、その他は企業や団体、企画会社さんからの依頼です。
ひとつひとつのご縁が仕事にそして、音楽家としての収入につながっていくのだと、今でも毎回お仕事をいただくたびに嬉しい気持ちになります。

音楽家として仕事の依頼が来ることは嬉しいですが、思うように仕事がいただけず、収入が少ないこともあります。
そんなときも、立ち止まらずに何か自分からアクションを起こすようにしています。
具体的には、自分でコンサートを企画したり、レッスンの生徒さんが増えるにはどうしたら良いのか考えたりしてきました。

フリーランスとして生きていく限り、今ある仕事が数年後にはある保証はどこにもありません
常に自分をアップデートし続け、自分が必要とされる場所はどこなのか、必要とされるにはどんな自分になれば良いのかを考え続けなければいけません。



2020年の音楽家の働き方

2020年はフリーランスの時代が来ると各業界でいわれています。そんな時代に音楽家の働き方はどんな変化を見せるのでしょうか。

挫折からの思考

私はなぜ、大学院卒業後フリーランスとして働く道を選んだかというと、「オーケストラに入りたかったから」です。「オーケストラのオーディションに合格するまで、何とか食いつなぐ」くらいに思っていることもありました。

しかし、オーディションに落ちまくり、コンクールでも大きな実績を挙げられずに行き詰まっていたところ、怪我や病気が重なりオーケストラに入るということは現実的ではなくなりました。

そして再び、音楽家として生き続ける方法を考えました。「どうしたら、フリーランスの音楽家として生き抜くことができるのか」来る日も来る日も考え続けました。

音楽家は時間がない

音楽家の生活はタフでないとこなせません。仕事をしている時間の他に、練習時間、コンサートの企画をしたり、勉強をしたり、仕事の予習をしたり、やるべきことは常に山積みです。

これまで、(当たり前かもしれませんが)収入を得るために多くの時間を使っていました。

私は、人生の多くの時間を出来るだけ多く音楽のことを考える時間に使いたいと思っています。そのためには、できるだけ収入を得るためだけにおこなっている仕事を減らしたり、効率よく行わないと身体がもたないなと思いました。

生活を維持しながら、音楽に没頭する時間を作るには、
収入アップ」または「自分が働かなくても収入を生み出す」ことが必要なのではないかという考えに至りました。



音楽家の収入を上げるには

収入アップには自分の価値を高める必要があると考えられます。

これまで、「演奏の仕事だけで食べられない音楽家は売れない音楽家だ」とう変な偏見が自分の中にありました。

しかし一方では、自分も含め「音楽家は演奏などの高い専門スキルを持ちながら、うまく収入として還元できていないな」という風に考えていました。そんなとき、ある人の言葉にはっとさせられました。

「スキルとスキルの掛け算で最強人材になれる」

これは、仮にクラリネットを吹ける人材が100分の1、英語を堪能に話せる人材が100分の1だとしたら、その人は1万分の1の貴重な人材になれるということを言っています。

実際にはクラリネットを吹ける人はそれ以下の人数だと思いますので、それより貴重な存在ですね。音楽家のスキルは貴重なものです。憧れる人だってたくさんいます。自信を持ってください!(これは自分へのメッセージかもしれません‥)

まずはこのスキルを大切にして、もうひとつ何か強みを作ることで自分の価値を上げて、自分にしかできない仕事ができれば、それが価値になり収入は自ずと上がっていきます。

自分が働かなくても収入を生み出す(YouTubeを例にとって)

2020年はYouTube時代が来ると言われています。
2019年、ダルビッシュ選手やお笑い芸人のオリラジの中田さんが有益なコンテンツを発信するチャンネルを立ち上げたことは衝撃的でした。

自分が働かなくても音楽家が収入を得る方法を、YouTubeを例にとって簡単にお話ししたいと思います。

YouTubeは再生回数などにより広告収入を得ることができます。

YouTubeを自分で発信するのはすごく作業に時間がかかります。しかし、いちど投稿したものから収益を得ることができたら、それ以降は時間を取られません。

極端な言い方をしますが、演奏の仕事はいちど終えたらそれ以降収入が発生することはありませんが、コンテンツを投稿して広告収入を得ることができたら、コンテンツが働いてくれて、自分自身はそれ以降働かなくても収入を得ることができます

YouTubeだけでなく、ブログも同じ仕組みになります。(収入を得る詳しい方法はここでは割愛させていただきます。)

音楽家はYouTubeに向いています。演奏という武器を持っているからです。また、音楽家は人前で話したりすることが得意な人が多いのではないでしょうか。

人が価値を感じるコンテンツを投稿すれば自然と集客(アクセス)は集まります。音楽家としての価値を提供してほしい人はいます。今持っている音楽家としてのスキルを活かす方法はたくさんあるのです。

 

まとめ

音楽家として収入を得るには様々な方法があります。
演奏家として就職を考えるならば、プロのオーケストラやブラスバンドのオーディションを受けるか自衛隊や警察音楽隊に入る方法があります。
その他の音楽家はほとんどフリーランスとして働いています。

フリーランスとしての仕事は多岐に渡ります。これからの時代は自分の価値を高めて、それを提供していくことによって収入が得られる仕組みになってきます。
音楽家としてのスキルに付加価値をつける強みをもうひとつもっておくと、最強の人材になり、あなたにしかできない仕事が生まれて、収入アップにつながるかもしれません。